ホームマーケット週次・月次市場情報先月のマーケットの振り返り(2017年11月)【マンスリー】/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

先月のマーケットの振り返り(2017年11月)【マンスリー】

2017年12月4日

1.概観

トピックス (1)2018年の米利上げペースの織り込みはこれから
(2)日本株の買い手に変化の兆し?
株式 米国の株式市場は、法人税減税を盛り込んだ税制改革実現への期待等から、NYダウ、NASDAQ指数等が史上最高値を更新しました。
欧州の株式市場は、ドイツにおいてメルケル首相の連立協議が不調に陥っているとの報を受け、同国のDAX指数が下落しました。
日本の株式市場は、業績予想の上方修正期待の強まりや、米国株の上昇が好感され、日経平均株価が上昇を続けました。
債券 米国の長期金利は、景気・雇用が堅調に推移していること等から上昇しました。もっとも、インフレ率が落ち着いているため大幅な上昇には至っていません。
欧州の長期金利も、景気の順調な拡大にもかかわらず、インフレ率の低位安定により、こう着状態となりました。日本の長期金利はほぼ横ばいでした。
為替 円の対米ドル相場は、インフレに対する見方が慎重になった米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録等を受けて上昇しました。一方、対ユーロ、対豪ドルでは、7-9月期のユーロ圏GDPや9月の豪州住宅建設認可件数といった良好な景気指標の公表を受けて、円が下落しました。
商品 原油先物価格は、11月末の石油輸出国機構(OPEC)総会で、協調減産の期間延長に関する合意が成立するとの観測から上昇しました。


(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)2018年の米利上げペースの織り込みはこれから

<注目点>

トランプ米大統領は11月2日、2018年2月に退任するイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の後任として、ジェローム・パウエル理事を指名しました。パウエル理事は今後、米議会上院の承認を経て正式に議長に就任します。パウエル理事は、イエレン議長とともに緩やかなペースでの利上げを進めてきたことから、議長就任後も現行の政策運営が踏襲される見通しです。政策の一貫性が保たれるとの期待は、市場の安心感につながります。そしてここからは、副議長や理事の人事に注目したいと思います。

<ポイント>

現在、2017年に投票権を持つ米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーのうち、副議長1名と理事2名が空席です。このまま2018年にパウエル理事が議長に就任した場合、副議長1名と理事3名が不在のままとなります(図表1)。4名ともFOMCで投票権を持つため、それぞれの政策スタンス次第で、FOMCメンバーが適切と考える政策金利水準の分布図(ドットチャート)は変化し、市場が織り込む利上げペースも変化します。この状態では、さすがに市場は先行きの利上げペースを明確に織り込むことはできません。フェデラルファンド(FF)先物金利市場が織り込む2018年の利上げ回数は、2017年11月3日時点で約1.7回にとどまっており(図表2)、ドル高の進行も今のところ限定的です。

(2)日本株の買い手に変化の兆し?

<注目点>

日本株を見通す上では、売買高の約6割を占める海外投資家の動向を把握することが重要です。海外投資家は、9月第4週から11月第2週まで、日本株の現物を7週連続で買い越しており、相場の上昇を牽引したと推測されます。一方、売買高の約3割を占める国内個人投資家は現物の売り越しを続けてきました。11月第3週は、この流れが変わり、海外投資家は先物も現物も売り越しています。また、個人投資家は買いに回っています(図表1)。実は、この変化には注意が必要です。というのも、過去において、「海外投資家の買い+個人投資家の売り」の構図で株価が上昇した後、「海外投資家の売り+個人投資家の買い」の構図に変わると、株価が下落に転じるケースがみられたからです(図表2)。

<ポイント>

日本株を押し上げてきた内外要因(日本企業の業績回復、安倍政権の安定、世界的な景気回復など)に、今のところ大きな変化はみられず、金融市場が極端にリスクオフ(回避)に傾いている様子はうかがえません。また、日本企業の4-9月期決算が11月中旬には一巡し、23日には米感謝祭が控えていたため、海外投資家が、日本株の一部を早々に売却し、持ち高を調整したと考えることもできます。そのため、11月第3週にみられた「海外投資家の売り+個人投資家の買い」という構図が今後も継続し、株安局面に転じたと判断するのは、やや早計と思われます。

3.景気動向

<現状>

米国は、ハリケーンの影響で一時的に景気・雇用が上下に大きく変動しましたが、拡大の基調そのものに変化は見られません。
欧州は、7-9月期の実質GDP成長率(速報値)が前期比+0.6%となり、前期の同+0.7%とほぼ同様の伸び率となりました。
日本は、7-9月期の実質GDP成長率が前期比年率+1.4%と7四半期連続でプラスとなるなど、拡大局面が続いています。
中国は、7-9月期の実質GDP成長率が前年同期比+6.8%と、前期の同+6.9%から小幅鈍化しましたが、底堅さを維持しています。
豪州は、資源セクターが軟調ですが、非資源セクターが景気を下支えしています。


<見通し>

米国は、個人消費と設備投資の二本の柱を軸に、緩やかな成長を維持する見込みです。トランプ大統領の景気対策は18年に実施となる見通しです。
欧州は、金融政策と財政政策の支援を受け、内需を牽引役に緩やかな景気拡大が続く見通しです。
日本は、世界的な景気回復が続くなか、雇用の順調な拡大を背景とした内需の持ち直しから、緩やかな成長が見込まれます。
中国は、共産党大会後も中国政府による経済政策により景気の失速は避けられ、安定した成長を続けると予想されます。
豪州は、17年後半から資源セクターの調整が一巡し、景気は拡大のペースを速める見込みです。

4.企業業績と株式

<現状>

S&P500指数の17年11月の1株当たり予想利益(EPS)は144.77米ドル(前年同月比+9.6%)と、14カ月連続で過去最高を更新しました。東証株価指数(TOPIX)の予想EPSは120.16円(同+17.4%)と、6カ月連続で二桁の伸びとなりました。
米国株式市場は、上旬に上院共和党が法人税減税実施の1年先送りが検討されていると伝えられ、市場は税制改革への不透明感から上値の重い展開となりました。しかし、下旬になると、税制改革が進むとの期待が高まったことから、堅調な展開となりました。ダウは2万4,000ドルの節目を超え、史上最高値を更新しました。また、S&P500指数、ナスダック指数も史上最高値を更新しました。一方、日本株式市場は、日経平均が96年6月、東証株価指数(TOPIX)が07年2月の高値を上回り、約26年ぶりの水準まで上昇しました。

<見通し>

S&P500指数採用企業の17年予想EPSは、11月30日時点で前年比+11.8%と二桁の増益が見込まれています。続く18年も17年と同じ、同+11.2%の増益が予想されています(トムソン・ロイターズI/B/E/S)。
一方、日本の予想経常利益増益率は、17年度が前年度比+16.2%(前月同+14.0%)と上方修正、18年度が+8.9%(前月同+9.0%)とほぼ横ばいです(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、17年11月30日時点)。
日米ともに企業業績に対する期待は依然強く、下振れリスクは限定的なものにとどまりそうです。12月は、米国では利上げペースが、また、日本では景気見通しが、それぞれ注目されると思われます。

5.金融政策

<現状>

FRBは、10月31日~11月1日開催のFOMCで、政策金利(FFレート)の誘導レンジを1.00%~1.25%で据え置くことを決定しました。なお、18年2月で任期の切れるイエレンFRB議長の後任には、パウエル現FRB理事が指名されました。
10月からECBは、10月26日の理事会で政策金利、預金ファシリティ金利をそれぞれ0.00%、▲0.40%に据え置きました。量的緩和政策については、18年1月以降の月間購入額を従来の600億ユーロから300億ユーロに半減し、18年9月まで続けることを決定しました。
日本銀行は10月31日に開催した金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定しました。短期の政策金利▲0.1%、長期金利である10年物国債利回りをゼロ%程度に操作する金融調節を維持しました。長期国債を買い増すペースも年約80兆円を目処とすることを据え置きました。

<見通し>

米国では、景気拡大が続くものの、インフレ率の低位安定が見込まれるため、利上げは引き続き緩やかなペースで行われる見込みです。
ユーロ圏では、ECBが18年1月から9月末まで月間購入額を300億ユーロに削減し、量的緩和政策を縮小します。その後の利上げは、19年以降に行われる見通しです。日本は、経済が緩やかな拡大を続け、物価上昇率も高まるものの、日銀が目標とする2%に到達するには時間がかかる見通しのため、当面金融政策を据え置く見込みです。

6.債券

<現状>

11月の米国10年国債利回りは小幅な上昇(債券価格は下落)となりました。米国の景気・雇用が堅調に推移しているためですが、インフレが落ち着いていることから大幅な金利上昇には至っていません。ドイツ10年国債利回りは、0.3%台半ばでこう着状態となりました。ドイツの7-9月期GDPは市場予想を上回りましたが、インフレの低位安定から利回りの上昇は小幅なものにとどまりました。一方、日本の10年国債利回りは低下しました。米国社債については国債とのスプレッドが拡大しました。社債スプレッドの拡大は、大型の買収・合併(M&A)に関わる資金調達の拡大に伴い社債の発行が増加したこと等によるものです。

<見通し>

米国では、長期金利は当面レンジ内で推移する見通しですが、18年にかけてFRBの資産圧縮などから緩やかにレンジを切り上げる見込みです。
欧州では、景気拡大が続くなか、今後はECBの金融緩和姿勢が徐々に後退していくことが想定され、長期金利は緩やかな上昇が見込まれます。
日本では、日銀のイールドカーブ・コントロールにより、長期金利は低位での安定した推移が予想されます。
米国など主要国の社債市場は、企業の堅調な業績などを背景に、国債利回りとのスプレッドが徐々に安定してくる見通しです。

7.為替

<現状>

円相場は、対米ドルで上昇、対ユーロでは小幅な下落となりました。米税制改革の先行きに不透明感が強まったことや、FOMC議事要旨のインフレに対する評価がやや慎重になったこと等から、「FRBによる利上げの速度はやはり緩慢なものにとどまる」との見方が強まったことが、ドル安円高につながりました。欧州ではドイツの7-9月期GDP統計など市場予想を上回る景気指標が発表されたことを受け、円に対してユーロが上昇しました。

<見通し>

米国景気は底堅く推移しており、FRBの利上げがドルの支援要因となる一方で、経常収支の不均衡是正を求める米国から政治的圧力が意識されることから、円相場は対ドルで一進一退の展開となる見通しです。対ユーロでは、良好な域内経済やECBの金融緩和縮小方針がユーロの支援材料になると予想されます。また、英国のEU離脱選択に伴う不透明感はあるものの、対英ポンドも当面レンジ内での推移となりそうです。一方、対豪ドルでは、豪州の景気や国際収支の改善、世界的な景気回復を受けた商品市況の下振れリスク低下を勘案すると、豪ドルの対円相場は底堅く推移する見通しです。

8.リート

<現状>

グローバルリート市場は、法人税減税を盛り込んだ米国の税制改革法成立への期待から株価が値上がりしたことを受けて、上昇しました。ただし、円が主要通貨に対して下落したことから、日本円ベースでは小幅な上昇となりました。

<見通し>

FRBによる利上げのペースは緩やかなものになると見られ、米長期金利は当面レンジ内の推移が見込まれます。世界的に緩和的な金融環境に依然変わりはなく、投資家が相対的に高い利回りを求める需要は根強いことが引き続きグローバルリート市場をサポートすると考えられます。世界的な景気拡大と低金利環境の下で、グローバルリート市場は底堅い展開が予想されます。

9.まとめ

株式 S&P500指数採用企業の17年予想EPSは、11月30日時点で前年比+11.8%と二桁の増益が予想されています。続く18年も17年と同じ、同+11.2%の増益が予想されています(トムソン・ロイターズI/B/E/S)。一方、日本の17年度予想経常増益率は、前年度比+16.2%(前月同+14.0%)、18年度が同+8.9%(前月同+9.0%)とそれぞれ上方修正となっています(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、17年11月30日時点)。日米ともに企業業績に対する期待が強く、下振れリスクは限定的なものにとどまりそうです。12月は、米国は税制改革案の審議の行方、日本では景気見通しなどが注目されそうです。
債券 米国では、長期金利は当面レンジ内での推移が予想されますが、18年にかけFRBの資産圧縮などを受けて緩やかにレンジを切り上げる見通しです。
欧州では、景気拡大が続くなか、今後はECBの金融緩和姿勢が徐々に後退していくことが想定され、長期金利は緩やかな上昇が見込まれます。
日本では、日銀のイールドカーブ・コントロールにより、長期金利は低位での安定した推移が予想されます。
米国など主要国の社債市場は、企業の堅調な業績などを背景に、社債スプレッドは引き続き安定的に推移する見通しです。
為替 米国景気は底堅く推移しており、FRBの利上げがドルの支援要因となる一方で、経常収支の不均衡是正を求める米国から政治的圧力が意識されることから、円相場は対ドルで一進一退の展開となる見通しです。対ユーロでは、良好な域内経済やECBの金融緩和縮小方針がユーロの支援材料になると予想されます。また、英国のEU離脱選択に伴う不透明感はあるものの、対英ポンドも当面レンジ内での推移となりそうです。一方、対豪ドルでは、豪州の景気や国際収支の改善、世界的な景気回復を受けた商品市況の下振れリスク低下を勘案すると、豪ドルの対円相場は底堅く推移する見通しです。
リート FRBによる利上げのペースは緩やかなものになると見られ、米長期金利は当面レンジ内の推移が見込まれます。世界的に緩和的な金融環境に依然変わりはなく、投資家が相対的に高い利回りを求める需要は根強いことが引き続きグローバルリート市場をサポートすると考えられます。世界的な景気拡大と低金利環境の下で、グローバルリート市場は底堅い展開が予想されます。
  ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。