ホームマーケット週次・月次市場情報先月のマーケットの振り返り(2015年8月)【マンスリー】/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

先月のマーケットの振り返り(2015年8月)【マンスリー】

2015年9月1日

1.概観

トピックス 世界同時株安は、中国の追加緩和と米国の9月利上げ観測後退などを材料に下落に歯止めがかかりました。
世界同時株安の進行や米国の要人発言などから、米国の9月利上げ観測は後退しました。
株式 主要国の株式市場は、中国の人民元切り下げをきっかけに中国の景気下振れ懸念が強まり、下落しました。中国が政策金利と預金準備率をともに引き下げたことや、米国の9月の利上げ観測が後退したことなどから、世界的な株価の下落に歯止めがかかりました。
債券 米国やドイツの国債利回りは、世界同時株安により低下した後、株価上昇につれ反転し、小幅に上昇しました。
為替 米ドルは、リスク回避の動きの強まりから、対円、対ユーロで下落しました。
商品 原油価格は、米国の減産や石油輸出国機構(OPEC)が「適正価格」に向けた交渉を示唆したことなどから、上昇しました。

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)世界同時株安は、中国の追加緩和と米国の9月利上げ観測後退などを材料に下落に歯止めがかかりました。

<現状>

8月11日の中国人民元の切り下げをきっかけに中国の景気下振れ懸念が強まり、世界同時株安が進行しました。中国が政策金利と預金準備率をともに引き下げたことや、米国の9月の利上げ観測が後退したことなどから、世界的に株価の下落に歯止めがかかりました。

<見通し>

中国は金融緩和に続き、大型建設工事の加速決定や株価対策の再開など、金融・財政・行政など全面的に対策を講じる構えを見せています。企業景況感が落ち着き、追加の景気対策などが順次公表されていくと、株式市場は平静さをとり戻していくと見られます。市場が落ち着けば、米国では、株式市場は企業業績の改善に沿った底堅い展開が予想されます。日本は、米中の株式市場の動向を見極めつつ、企業業績の拡大に沿った展開が予想されます。

(2)世界同時株安の進行や米国の要人発言などから、米国の9月利上げ観測は後退しました。

<現状>

世界同時株安が進行し、8月26日に米NY連銀のダドリー総裁が9月の利上げの可能性が低下したと発言したことから、利上げ観測は後退しました。フェデラル・ファンド(FF)金利先物市場で予想されるFF金利の水準を見ると、8月31日時点の利回り曲線は7月31日時点より上昇ペースが緩やかとなる見通しが示唆されています。一方、7月の事前の予想を上回る耐久財受注統計や4-6月期米国GDP(改定値)が上方修正されるなど、経済は底堅く推移していることを示す統計も公表されました。

<見通し>

8月19日に公表された、7月28日~29日開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録によると、大半の参加者は利上げの条件はまだ整っていないものの、その時期は近づきつつあるとの判断が示されました。一方、物価の見方について意見が分かれました。物価や雇用の改善の見極めにより、利上げの時期が左右される展開が予想されます。FF金利先物市場では年内0.25%程度の利上げが示唆されており、9月利上げ観測は後退したものの、年後半の利上げの可能性が意識される展開が続きそうです。

3.景気動向

<現状>

米国は、4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+3.7%となり、1-3月期の同+1.8%から回復しています。
欧州は、4-6月期の実質GDP成長率が前期比+0.3%と緩やかな景気回復が持続しています。
日本は、4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率▲1.6%と消費や輸出が低迷し、マイナス成長となりました。
中国は、4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+7.0%と1-3月期比横ばいで、企業景況感が低下し、景気下振れ懸念が強まりました。
豪州は、住宅価格の上昇による資産効果などから消費が緩やかな回復傾向にあり、輸出は底堅く推移しています。

<見通し>

米国は、経済指標の下振れが一巡し、年+3%程度の成長が見込まれます。
欧州は、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和に支えられ、輸出が主導する、緩やかな景気回復が持続する見通しです。
日本は、輸出の回復や賃金上昇を背景にした個人消費の回復から、景気の再浮揚が見込まれます。
中国は、追加の金融緩和や財政出動などの景気対策が発動されれば、景気の下振れ懸念はいったんは和らぐと期待されます。
豪州は、過去10年の平均成長率(+3%前後)を下回りそうですが、物価が安定し、消費と住宅が景気を下支えすると予想されます。

4.企業業績と株式

<現状>

主要米国企業の4-6月期の増益率は前年同期比+1.4%(トムソン・ロイター調べ、8月31日集計時点で約98%)と、当初の減益予想が上方修正され小幅ながら増益となりました。日本の主要企業(東証1部、3月期決算、除く金融、 8月26日集計時点)の2015年4-6月期は、経常利益が前年同期比約3割の増益と、消費税の影響から落ち込んだ前年から大きく改善しています。

<見通し>

主要米国企業の予想増益率は、7-9月期にはいったん落ち込むものの、年後半に向けて改善し、「エネルギー」セクターの大幅な減益を除けば概ね堅調な業績が見込まれています。日本の主要企業の2015年度の経常利益は、景気の緩やかな改善、円安傾向、米国景気の回復などから、前年度比+8.9%程度への上振れが見込まれます。中国などの新興国経済の減速懸念は株式市場の重石と見られ、変動が大きくなる可能性もあります。しかし、市場が落ち着けば、日米欧などの先進国の株式市場は底堅い企業業績を背景に、底堅く推移することが期待されます。 

5.金融政策

<現状>

FRB(連邦準備制度理事会)は、雇用や経済指標の改善を確認し、年内利上げを開始するタイミングを慎重に見極めています。ECB(欧州中央銀行)は月約600億ユーロの国債などを購入する量的金融緩和を継続しています。日銀は、マネタリーベースを年間約80兆円拡大させる強力な金融緩和を続けています。

<見通し>

9月にもあると見られた米国の利上げ観測は年後半へと後ずれしました。利上げペースは引き続き緩やかと見込まれます。ECBは消費者物価上昇率を2%近くとする物価目標の達成が見通せるまで、現行の国債購入と長期リファイナンスオペ(TLTRO)による金融緩和を継続する見込みです。また、ECBは必要に応じて、国債購入額を増額する方針を示しています。日銀は現行の強力な金融緩和を当面維持する方針です。米国と日欧での金融政策の方向性の違いが意識される展開が当面続く見込みです。

6.債券

<現状>

米国債の利回りは、小幅に上昇しました。世界同時株安の進行からリスク回避の動きが強まり、一時2%を下回る場面もありましたが、リスク回避の動きが後退し月末にかけて上昇しました。ドイツ国債の利回りもリスク回避の動きが後退し、小幅に上昇しました。
米国の社債スプレッド(国債との利回り差)は、リスク回避の動きの強まりから拡大しました。

<見通し>

米国債利回りは年内の利上げ開始が意識され緩やかに上昇する展開が見込まれます。しかし、米国の物価見通しの落ち着きから、国債利回りの上昇は緩やかにとどまると予想されます。ドイツ国債の利回りは、投資家の格付けの高い国債への需要が底堅いことや、ECBの国債購入の継続から、低位での推移が見込まれます。ギリシャ情勢はいったん落ち着いたことから、2012年のように危機がユーロ圏加盟国に伝播する可能性は限定的と見られます。米国など主要国の社債市場では、企業の底堅い業績や慎重な財務運営などを背景に、利回りの上昇は限定的となり、その結果、社債スプレッドは比較的安定的な推移が見込まれます。

7.為替

<現状>

米ドルは、対円で下落しました。世界同時株安の進行からリスク回避の動きが強まり、対円で一時116円台まで下落する局面もありました。しかし、その後リスク回避の動きが後退し、徐々に下げ幅を縮小しました。ユーロは、米ドルに対して上昇しました。

<見通し>

米ドル円相場は、日米の金融政策の方向性の違いが引き続き意識され、円が下落しやすい環境が継続する見込みです。ただし、中国などの新興国経済の減速懸念などの高まりや原油・資源価格の下落などにより、リスク回避の動きが強まる場合には、円高が進む場面も想定されます。ユーロ円相場は、日欧ともに金融緩和の方向にあることから、方向感が出にくいと見込まれます。

8.リート

<現状>

リート市場は下落しました。世界同時株安の進行から、リスク回避の動きが強まり、リートも下落しました。米ドルは円に対して下落したことから、円ベースのリート指数は現地通貨ベースよりマイナスが大きくなりました。

<見通し>

米国の物価見通しが落ち着いていることから、米国の利上げペースは緩やかにとどまり、金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。株式市場の落ち着きから、リスク回避の動きが後退すると、不動産市場の回復、資金調達コスト抑制などリート市場にとっての好環境が意識され、リート市場は底堅い展開が予想されます。

9.まとめ

株式 中国などの新興国経済の減速懸念は市場の重石と見られ、変動が大きくなる可能性もあります。しかし、市場が落ち着けば、日米欧などの先進国の株式市場は底堅い企業業績を背景に、底堅く推移することが期待されます。
債券 米国債利回りは米国の年内の利上げ開始が意識され緩やかに上昇する展開が見込まれます。しかし、米国の物価見通しの落ち着きから、国債利回りの上昇は緩やかにとどまると予想されます。
ドイツ国債の利回りは、投資家の格付けの高い国債への需要が底堅いことや、ECBの国債購入の継続から、低位での落ち着きどころを探る展開が見込まれます。ギリシャ情勢は一旦落ち着き、ユーロ圏の周辺国への波及は限定的と見られます。
為替 米ドル円相場は、日米の金融政策の方向性の違いが引き続き意識され、円が下落しやすい環境が継続する見込みです。ただし、中国などの世界経済の減速懸念などの高まりや原油・資源価格の下落などにより、リスク回避の動きが強まる場合には、円高が進む場面も想定されます。
ユーロ円相場は、日欧ともに金融緩和の方向にあることから、方向感が出にくいと見込まれます。
リート 国債利回りが急上昇するリスクは限定的で、リートの資金調達環境もしばらくは良好と見られます。株式市場の落ち着きから、リスク回避の動きが後退すると、不動産市場の回復、資金調達コスト抑制などリート市場にとっての好環境が意識され、リート市場は底堅い展開が予想されます。

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。