ホームマーケット週次・月次市場情報先月のマーケットの振り返り(2014年8月)【マンスリー】/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

先月のマーケットの振り返り(2014年8月)【マンスリー】

2014年9月1日

1.概観

トピックス ユーロ圏の追加緩和観測が、米国や日本にも影響し、先進国の10年国債利回りは一段と低下しました。
FOMC議事録などから、米国の利上げ時期が前倒しされるとの思惑が強まり、ドル高となりました。
株式 米国株は、景気や企業業績が予想以上に堅調で、過去最高値付近へと値を戻しました。
日本株は、消費税増税後の景気が振るわず、ドル高が下値を支えたものの、前月比で下落しました。
債券 ユーロ圏の景気と物価の見通しが弱含むなか、追加緩和観測が強まり、債券利回りは低下しました。
為替 米国の利上げやユーロ圏の追加緩和策への思惑から、円に対してドルは上昇、ユーロは下落しました。
商品 原油価格は、北半球の夏の需要期が終わり、需給のひっ迫感が薄れる見通しなどから、下落しました。

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)ユーロ圏の追加緩和観測が先進国の金利を押し下げ。

<現状>

欧州では、4-6月期実質GDP成長率が前期比+0.0%に留まるなど、成長の鈍化が目立ってきました。ドラギECB総裁が中期のインフレ見通しが低下したと言及(ジャクソン・ホールでの講演)したことなどから、追加の金融緩和策が必要との見方が強まり、欧州の金利を押し下げました。イタリアやスペインなどの国債利回りが米国を下回る局面も見られ、利回りを求めた資金は米国の債券市場にも流入しました。

<見通し>

欧州の金利が大きく低下したことを受け、米国とドイツの10年国債金利差は、過去最大まで拡大しています。米国債のように高い信用力と利回りのある資産への投資は続き、今後も米国への資金流入が想定されます。こうした金利差への注目は、米長期金利の押し下げ要因、ユーロ安米ドル高要因となって、当面の市場に影響を与える可能性があります。

(2)米利上げ時期の前倒し観測が強まり、ドル高要因に。

<現状>

8月後半にかけて、市場では米利上げ時期の前倒し観測が強まりました。2015年前半にも利上げが必要と主張するFRB幹部が増えたほか、7月29日~30日分の「FOMC議事録」では、多くの参加者が、雇用情勢とインフレなどの改善ペースが加速した場合、「金融緩和策を現在想定しているよりも早期に取り除くことが適切となる可能性がある」との見方に賛同しました。こうした見方を背景に、ドルは対円で上昇しました。

<見通し>

市場の織り込みから見ると、利上げ開始は2015年半ば、もしくはそれ以降と見られます。また、米国の景気回復は緩やかなこと、地政学リスクがくすぶることなどから、米国債への需要はなお強く、金利上昇ペースは緩やかと見られています。

3.景気動向

<現状>

米国は、寒波による景気鈍化から立ち直り、雇用の増加や住宅市場の持ち直しを伴う景気回復が続いています。
欧州は、成長率が再びゼロ近傍に鈍化するなか、低インフレ傾向が目立ってきました。
日本は、消費税増税の前後から経済指標が大きく振れており、景気回復が足踏みする可能性も懸念されます。
中国は、政府が景気支援策の実施を表明した4月以降、生産や投資が底を打ってきました。
豪州は、1-3月期の資源輸出が好調で、景気は中銀や市場が予想していた以上に底堅く推移しています。

<見通し>

米国は、雇用情勢の堅調さに加え、住宅価格・株価の上昇傾向を受けた個人消費などが景気を支えそうです。
欧州は、ECBが9月から新たな資金供給策を実施するほか、追加緩和策による一段のテコ入れも検討されそうです。
日本は、年後半には個人消費や設備投資の底堅さ、公共投資などの経済対策により、景気回復が続きそうです。
中国は、輸出が景気を支えているほか、今年の+7%台の成長をより確実にする景気刺激策も期待されます。
豪州は、今年の成長見通しが上振れしましたが、急落した資源価格や財政再建方針などによる影響に要注意です。

4.企業業績と株式

<現状>

主要米国企業の2014年4-6月期決算は、前年同期比+8.5%(8月29日時点、トムソン・ロイター集計に基づく)となっています。予想以上に底堅かった1-3月期の同+5.6%から、緩やかな持ち直しが続いています。日本の主要企業(東証1部、3月本決算、除く金融)の2014年4-6月期決算は、経常利益が前年同期比+5.4%と、前年を上回って推移しています。

<見通し>

主要米国企業の増益率予想は、今年後半に二桁増へと回復していく見通しです。日本の主要企業の2014年度の経常利益は、円高是正による大幅な押し上げ効果は一巡するものの、緩やかな円安基調や米国需要の回復などを背景に、増益基調を維持しそうです。企業業績が堅調なことに加え、低金利の長期化観測にも支えられ、日米ともに株価は底堅く推移すると思われます。

5.金融政策

<現状>

FRBは、7月29日~30日の連邦公開市場委員会(FOMC)においても、QE縮小の継続を決定しました。ECBは9月から、新たな資金供給措置(TLTRO)を実施する予定です。今後2年間での供給規模は、4月末のデータに基づけば最大4,000億ユーロとなりますが、ドラギ総裁は最終的に1兆ユーロに達する可能性がある、としています。日銀は、物価見通しを据え置いており、早期の追加緩和への期待は後退しています。

<見通し>

FRBは今後も会合ごとにQEを縮小し、10月に終了させる見込みです。金利先物などから見ると、市場は2015年半ばから後半に利上げが開始されると織り込んでいます。ECBは景気・物価見通しの下振れに対応して、TLTRO実施後も、資産購入などの追加策を導入する可能性があります。日銀は年+2%の物価上昇という目標に向けて量的・質的金融緩和を続けており、緩和策を拡充する可能性もありそうです。

6.債券

<現状>

米国では、欧州の金利低下や地政学リスクの影響もあり、10年国債利回りは低下しました。欧州では、ECBの追加の金融緩和策観測などを受け、国債利回りの低下が続きました。日本では、世界的な金融緩和環境の影響を受け、国債利回りが低下しました。米国の社債スプレッド(国債との利回り差)は、利回りを求める動きなどから社債利回りが低下し、スプレッドは縮小しました。

<見通し>

米国の景気回復や将来の利上げ観測が強まるにつれ、米国債などの利回りには上昇圧力がかかりそうです。ただし、FRBはゼロ金利政策を長期にわたり維持すると見られ、利回りの上昇は緩やかに留まると思われます。米国など主要国の社債市場は、底堅い企業業績や慎重な財務運営、旺盛な社債への需要などを背景に、利回りは低位で安定しそうです。その結果、社債スプレッドは安定的な推移を続けると思われます。

7.為替

<現状>

米と日・欧の金融政策の方向性の違いが意識され、円に対して、ドルは上昇、ユーロは下落しました。

<見通し>

米ドル円相場は、米国のQEが終了する今秋にかけ、先行きの利上げや日米の金利差拡大などが意識されやすくなると見られ、やや後退していた円安・米ドル高観測が強まる局面もありそうです。ユーロ円相場は、ECBの追加緩和策への思惑が強まる一方、日銀も大規模な緩和姿勢を示しており、一進一退の推移となりそうです。

8.リート

<現状>

リート価格は上昇しました。不動産市場のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は改善傾向にあり、賃料などにも上昇が見られます。また、主要先進国の低金利が続いていること、世界的に資金調達環境が改善していることなど、金融面も好材料です。加えて、先進国の低金利環境が続くなか、新たな投資先を求めた資金が流入しやすいことも、追い風となっています。

<見通し>

FRBは出口戦略の検討を始める一方、金利上昇を抑制する姿勢を維持しています。金利が急上昇するリスクが限定的なことは、景気の安定化、資金調達コストの抑制という、双方の面からリートの好材料となります。また、景気の緩やかな回復を背景に、不動産市場のファンダメンタルズは今後も緩やかな改善を続けると見込まれ、リート市場は底堅く推移しそうです。

9.まとめ

株式 米国を中心に先進国景気は緩やかな回復が見込まれること、中国景気への懸念が緩和されたこと、各国の企業業績が堅調に推移していること、低金利環境が続くと見られることなどに支えられ、先進国・新興国ともに、株価は緩やかな上昇基調が続くと思われます。
債券 米雇用の回復や将来の利上げ観測の高まりにつれ、米国債などの利回りに上昇圧力がかかると見込まれます。一方、FRBは長期間にわたり金利を低めに維持すると見られること、ECBが金融緩和を強化していることなどから、利回りの上昇は緩やかと思われます。
為替 米ドル円相場は、米国のQE縮小や利上げ時期へ思惑、日銀の金融緩和策の継続などを背景に、円安・米ドル高観測が続きそうです。
ユーロ円相場は、ECBの追加緩和策への思惑が強まる一方、日銀も大規模な緩和姿勢を示しており、一進一退の推移となりそうです。
リート 国債利回りが急上昇するリスクは限定的で、リートの資金調達環境もしばらくは良好と見られます。また、世界景気の緩やかな回復を背景に、賃料など不動産市場のファンダメンタルズは堅調に推移すると見られ、リート市場は底堅く推移すると見込まれます。

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。