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欧州銀行の「ストレステスト」(欧州) 【キーワード】

2016年8月2日

<今日のキーワード>
欧州連合(EU)の銀行監督機関である、欧州銀行監督機構(EBA)は7月29日、主要51行の健全性を点検する「ストレステスト」(資産査定)の結果を発表しました。「ストレステスト」とは、経済状況が悪化したり、金融市場が混乱したりしても業務が続けられるか、銀行の抵抗力の強さをみる点検手法のことです。リーマン・ショックにより銀行が相次ぎ経営不振に陥った反省を受け、先進国では定期的に実施されています。

【ポイント1】前回より資本増強が進む

個別銀行の合否は判定せず

■今回の「ストレステスト」は、18年までの3年間にわたるストレスケースでも、全体としてみると、深刻な資本不⾜となる銀⾏は少ないという結果でした。51行全体の健全性を示す中核的自己資本比率は、15年の13.2%から、景気が失速すれば、18年末に9.4%まで下がると指摘しましたが、大半の損失は吸収できるレベルと見られます。

■14年に欧州中央銀行(ECB)が実施した前回の査定では、自己資本比率の「合格ライン」を設け、25行を「不合格」と判定しましたが、今回は金融危機をおおむね脱したとの理由で、個別の銀行の合否を判断していません。

【ポイント2】モンテパスキ銀行は厳しい

再建策を同日発表

■ただし、最も市場で注⽬されたイタリアのモンテパスキ銀⾏については唯⼀、ストレスケースで自己資本比率がマイナス(▲2.23%)となりました。

■同行は29日、最大50億ユーロの増資を含む再建策を発表し、投資家の不安払拭に努めました。イタリアの銀行は大量の不良債権を抱えており、抜本的な再生には時間がかかりそうです。

【今後の展開】 欧州銀行の健全化は途上

■今回の査定結果は概ね事前の市場予想通りであり、直ちに欧州の金融システム不安が高まるといったような材料ではありません。しかし、一定規模の銀行で線引きしたため、欧州の中でも不良債権比率が高いギリシャやポルトガルの銀行は対象に含まれておらず、不安が払拭されたとは言えません。

■欧州銀行については今後、マイナス金利政策が長期化することによる金利収入の縮小や、英国のEU離脱選択を背景とした投資銀行業務への下押し圧力(手数料収入の減少)などが懸念されます。こうした収益面のリスクを考慮すると、欧州銀行の健全化はまだ途上と見られます。

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