ホームマーケット日々のマーケットレポート景気を下支えするユーロ圏の「財政政策」/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

景気を下支えするユーロ圏の「財政政策」 【キーワード】

2016年7月5日

<今日のキーワード>
ユーロ圏各国の「財政政策」には、各年度の財政赤字はGDPの3%以内、公的債務残高は同60%以下に留めるルールがあります。リーマン・ショック後の景気減速からの回復局面で、多くのユーロ加盟国はこのルールの為に財政を切り詰める必要がありました。この状況は2011年から14年まで続きましたが、15年から状況には変化が見られています。今年は「財政政策」が景気を下支えすることが期待できます。

【ポイント1】ユーロ圏の財政制約

財政赤字はGDPの3%まで

■ユーロ圏加盟国には、毎年の財政赤字がGDPの3%以内、公的債務残高は同60%以下に留めるとのルールがあります。統一通貨ユーロを使っており、金融政策をECB(欧州中央銀行)で一元的に決定しているため、各国の経済や財政を近い状態に保つ必要があるためです。

【ポイント2】異なる財政規律の状況

周辺国は依然厳しい財政状況

■以上のルールはありますが、各国の財政赤字の状況にはかなり差異が出ています。ドイツが飛びぬけて良好な一方、スペインやギリシャなどの、いわゆる周辺国の財政赤字はかなり大きくなっています。周辺国の立場からすると、経済の状態がそれほどよくない時には拡張的な「財政政策」によって景気を拡大軌道に乗せたいところです。しかし、ユーロ圏のリーダー格のドイツが財政規律にこだわる姿勢が強く、財政規律ルールの緩和は難しいと見られます。

【今後の展開】「財政政策」は景気に対して追い風に

■ユーロ圏の「財政政策」スタンスは、2011年から14年までは景気に対して緊縮的でしたが、15年にはほぼ中立的となり、今年は対GDP比+0.3%と小幅ながら景気に対して刺激的になる見込みです。これは、難民の受け入れと、反欧州連合(EU)感情の高まりへの配慮が作用していると見られます。反EU感情については、高まるEU主導の緊縮的な経済運営への反感を和らげるために、財政ルールはそのままに、実態としての財政赤字を容認する形での財政支出増となっている模様です。先日の英国のEU離脱となる国民投票を受け、反EU感情を抑えるための財政支出増加に拍車がかかる可能性があります。

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