投資で得た利益に税金がかからない「NISA」には、「成長投資枠」「つみたて投資枠」という2種類の枠があります。今回は成長投資枠について、つみたて投資枠との違いやその活用法について紹介します。
NISAとは、投資で得た利益に対して通常かかる税金(20.315%:2025年4月末現在)が非課税になる制度です。個人の資産形成を後押しするために2014年に設けられ、2024年1月からは投資条件等が変更されて現行の制度がスタートしました。
NISAには「成長投資枠」と「つみたて投資枠」という2つの枠があり、前者は上場株式や投資信託など幅広い金融商品を積立や一括で投資できるもので、後者はより厳しい一定の条件を満たす投資信託を定期的に一定額ずつ積み立てていくものです。それぞれ限度額や投資対象商品などが異なるので、まずはその違いを確認していきましょう。
NISAの成長投資枠とつみたて投資枠の主な違いは下表の通りです。
併用可能
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
---|---|---|
口座開設期間 | 恒久化 | |
非課税保有期間 | 無制限 | |
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
対象商品 | 長期の積立・分散投資に適した 一定の投資信託 |
上場株式・投資信託 (一定の基準あり)等 |
買付方法 | 積立 | 一括・積立 |
非課税保有限度額 | 両枠合算で 1,800万円 | |
内枠で1,200万円 | ||
非課税投資枠の管理 | 買付金額で管理/売却分の枠の再利用可能 |
まず、1年間に投資できる年間投資枠に違いがあり、つみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠はその2倍の年間240万円が利用できます。
実は2024年にNISAの内容が大幅に見直されて、年間投資枠の上限額が拡大され、つみたて投資枠と成長投資枠の併用も可能となりました。
また、この年間投資枠とは別に、生涯にわたって保有できる非課税保有限度額(総枠)が設けられ、1,800万円となりました。ただし、そのうち成長投資枠は最大1,200万円までとなっています。
2024年からNISAが恒久化され、非課税保有期間は成長投資枠、つみたて投資枠いずれも「無期限」となりました。以前は、制度自体に期限があったのに加え、非課税期間も「つみたてNISA」が最長20年、「一般NISA」が最長5年と限定されていましたが、無期限となったため、より長期的な運用が可能になっています。
成長投資枠で投資できる対象は、上場株式やETF(上場株式投資信託)、REIT(不動産投資信託)、多くの投資信託など、幅広い金融商品です。一方、つみたて投資枠は、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託のみにより厳しく限定されています。
2023年までの旧NISAではつみたてNISAと一般NISAは併用不可でしたが、2024年からの新NISAでは成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能になりました。したがって年間合計360万円まで利用が可能です。
つみたて投資枠は文字通り、毎月といったように一定期間ごとに一定の金額を決めて定期的に買い付けていくことになりますが、成長投資枠はいつでも好きなときに、年間投資枠の範囲内で買付ができます。また、買付方法も一括投資だけでなく、積立投資も可能です。
成長投資枠とつみたて投資枠は併用でき、年間投資枠や非課税保有限度額の範囲内であれば、2つの枠の組み合わせや投資タイミングは自由です。なお、つみたて投資枠は非課税保有限度額の1,800万円を全額使うことも可能です(成長投資枠は1,200万円までの上限あり)。自分に合った使い方を見つけましょう。
成長投資枠が向いている方 | つみたて投資枠が向いている方 |
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成長投資枠の年間投資枠は240万円とつみたて投資枠の2倍の枠になっているため、まとまった余裕資金がある方、ある程度投資経験があり幅広い投資対象から選びたい方などに向いています。
また、2023年以前の旧NISAでは一度利用した非課税枠はその商品を売却しても消滅していましたが、2024年からは売却分の枠の再利用*が可能になりました。枠の再利用は売却した翌年から可能です。
より柔軟に利用できるようになり、投資先の見直しも可能です。資金に余裕がおありなら、NISAを積極的に活用し、長期での資産運用を検討いただいてはいかがでしょうか。
*売却時の金額ではなく、買付金額分の枠が再利用可能となります。
つみたて投資枠は定期的に金額を決めて積み立てていく方式なので、現時点では手元資金が少ないため少しずつ資産形成をしたい方、投資に手間をかける時間がない方や投資初心者の方に向いています。
積立方式なら手元資金が少なくても、証券会社によっては100円といった少ない資金から手軽に始められます。成長投資枠よりも投資対象が限定されていて、選びやすいでしょう。しかも、積立条件を設定してしまえば、自動的に買い付けられるので、手間がかかりません。
なお、一度にまとまった資金で投資すると投資タイミングによっては高値で購入してしまうリスクがありますが、積立方式なら価格が高い時は購入数量(口数)が少なくなるものの、安いときには多く購入することができるため、価格変動のある金融商品に対して平均購入単価を抑える効果も期待できます。(ドル・コスト平均法)
したがって、投資タイミングを見極めるのが難しい投資の初心者でも比較的始めやすいでしょう。まずはつみたて投資枠から始め、ボーナスなどで余裕資金ができたタイミングで、成長投資枠を併用するという方法もあります。
成長投資枠では、株式やアクティブファンドなど、より幅広い金融商品の中から選ぶことができます。その特徴を生かした例を紹介しましょう。
配当利回りの高い株式などを長期保有することで、インカムゲインの非課税メリットをより多く受けられます。
積極的な運用を目指すアクティブファンドの多く*や日本株、米国株などの個別株はつみたて投資枠の対象外ですが、成長投資枠なら購入できるものもあります。未経験で少しずつ試してみたい場合にも有効です。
*アクティブファンドの一部には対象となる商品あり
成長投資枠では一括購入だけでなく、積立方式で購入することも可能です。まとまった資金がなくても、つみたて投資枠の対象外である投資信託を少しずつ積み立てることもできます。
つみたて投資枠の年間投資枠は120万円で、それ以上投資することはできませんが、その商品が成長投資枠の対象となっていれば成長投資枠で別枠として購入するという方法もあります。
成長投資枠では、日本株、外国株、ETF、REITのほか、多くの投資信託が購入できます。なかでも投資信託はそれ自体が国内外の債券や株式など、さまざまな投資対象に分散投資する商品なので、リスク分散の効果が期待できます。
対象となる投資信託は下記の条件を満たすファンドです。
1 信託期間が20年以上
2 ヘッジ目的等以外の目的でデリバティブ取引による運用を行わない
3 毎月分配型ではない
特定の株価指数に連動するインデックファンドや積極運用を目指すアクティブファンドなど、幅広いラインアップの中から選べます。
以上、NISAの成長投資枠の特徴と活用法について解説しました。成長投資枠では年間240万円まで、幅広いラインアップの中から投資商品を選び、無期限で非課税運用をすることができます。手元資金に余裕がある方は、自分に合った方法で活用を検討してみてはいかがでしょうか?
(執筆)塩田真美
出版社の女性誌・マネー雑誌の編集部を経て、編集者・ライターとして活動。主に女性誌や広報誌、金融関連サイト、書籍などで、人物インタビューのほか、NISA(少額投資非課税制度)、株主優待、ふるさと納税、節約術などの記事を手がける。
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