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新NISAのデメリットとは?さらなるステップアップのために運用のポイントを解説 新NISAのデメリットとは?さらなるステップアップのために運用のポイントを解説

新NISAのデメリットとは?さらなるステップアップのために運用のポイントを解説

2025.06.10

2024年1月に大幅に年間投資枠が拡大されるなど大きく生まれ変わった「新NISA」。投資で得た利益に対して税金がかからないお得な制度として人気を集めていますが、メリットだけでなくデメリットも存在します。そこで、さらなるステップアップのために、新NISAのメリットとデメリット、上手に活用する方法を解説します。

そもそも新NISAとは?

NISAとは、投資で得た利益に対して税金がかからない少額投資非課税制度のことです。通常、株式や投資信託などの金融商品への投資で得た売却益や配当金などの利益に対して税金(20.315%:2025年4月末現在)がかかりますが、NISA口座で投資した場合はこの税金がかかりません。2014年に個人の資産形成を後押しする制度として設けられました。

この制度が2024年1月に、大幅に見直され「新NISA」と呼ばれる新しい制度に生まれ変わりました。制度が恒久化されるとともに、非課税保有期間が無期限になり、利用できる非課税保有限度額も大幅に拡大されたのです。旧制度との主な違いは下表の通りです。

旧NISA 新NISA
つみたてNISA 一般NISA つみたて投資枠 成長投資枠
投資可能期間 2023年末まで 恒久化
併用 併用不可 併用可能
年間投資枠 40万円 120万円 120万円 240万円
非課税保有期間 最長20年間 最長5年間 無期限
非課税保有限度額 800万円 600万円 両枠合算で1,800万円
(成長投資枠は内枠で1,200万円)
非課税枠の管理 買付⾦額で管理/
売却分の枠の再利⽤不可
買付⾦額で管理/売却分の枠の再利⽤可能*1
投資対象商品 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 上場株式・投資信託等 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 上場株式・投資信託等*2
買付方法 積立 一括・積立 積立 一括・積立
  • *1 枠の再利⽤ができるのは、売却した翌年以降。
  • *2 整理・監理銘柄、信託期間20年未満、毎⽉分配型およびデリバティブ取引を⽤いた⼀定の投資信託等を除く。
  • (出所)金融庁HP等を基に作成

まず、2023年までの旧NISAでは「つみたてNISA」と「一般NISA」が併用できず、どちらかを選ぶ必要がありました。新NISAでは「つみたて投資枠」「成長投資枠」が設けられ、その併用が可能となりました。

旧NISAでは、制度自体に期限があったのに加え、「つみたてNISA」が最長20年、一般NISAが最長5年と非課税保有期間が限定されていました。新NISAでは制度が恒久化され、いずれの投資枠でも非課税保有期間は無期限で運用できます。

そして、1年間で利用できる年間投資枠の上限も「つみたて投資枠」が120万円、「成長投資枠」が240万円と、旧NISA(「つみたてNISA」40万円、「一般NISA」120万円)から実質的に大幅に拡大しました。両枠の併用も可能になったので、年間合計360万円まで利用できます。

ただし、生涯にわたって保有できる「非課税保有限度額」が設けられ、最大1,800万円(成長投資枠はそのうち最大1,200万円)までとなりました。

こうした大幅なリニューアルで制度が生まれ変わったことから、2024年には「新NISAブーム」といわれるほど注目を集め、NISAを利用する人も急増しました。

「新NISA」5つのデメリット

ただ、いいことづくしに思える新NISAにもデメリットはあるので、確認しておきましょう。

短期で売買を繰り返すのには向かない

NISAはもともと個人の資産形成を後押しするために設けられた制度なので、長期運用を想定してつくられています。そのため、年間で投資できる金額に限度があるうえ、一度利用した後で売却をしても、その空いた枠を再利用できるのは翌年以降と決められています。従って短期で売買を繰り返して利益を狙うような取引には向いていません。少額ずつでも時間をかけて積み立てたり、じっくり長期で保有したりすることで、非課税のメリットを享受しながら資産形成を目指すのに適しています。

旧NISAでの投資をそのまま引き継げない

旧NISAは2023年末で終了し、2024年から始まった新NISAとは切り離されています。旧NISAですでに保有している商品は、新NISAとは別枠で当初の非課税期間が終わるまで運用を継続できますが、期間終了時に新NISAの口座に移管して引き継ぐことはできません。

損益通算や繰越控除ができない

NISA口座で損失が生じた場合であっても、その損失と他の口座で生じた利益を合算して相殺する「損益通算」をすることはできません。当然ながら、損益通算しても損失が残る場合に、最大3年間その損失を繰り越して翌年の利益から差し引く「繰越控除」も利用できません。

未成年者は口座開設ができない

NISA口座を開設できるのは、「日本国内に住んでいる18歳以上の人」で、未成年者は利用できません。 旧NISAでは「ジュニアNISA」という18歳未満を対象にした制度がありましたが、2023年末で廃止されました。

海外に居住すると取引できなくなる

海外赴任などで日本を離れて海外に住んでいる場合、「国内在住」という条件を満たさないので、NISAでの新規取引はできません。ただし、海外転勤などの条件を満たし、所定の届け出をすれば、すでに保有している一部の資産は継続保有可能な場合があります(金融機関によって対応は異なる)。

新NISAをやらないほうがいい人は?

NISAの対象商品は元本保証のある預貯金などとは異なり、大なり小なり元本割れする可能性があります。そのため、資金が少しでも減ってしまうと困るような生活資金や近々使う予定のある資金を投資にあてると、取り返しのつかない事態にもなりかねません。高いリターンを求めるなら、それ相応のリスクも取る必要があるので、投資は当座使う予定のない余裕資金で行うのが鉄則です。

資金に余裕のない場合や元本割れを許容できない人は、そもそもNISAには向いていません。また、じっくり構えることができず、短期的な価格変動に一喜一憂し、一時的な下落であっても慌てて売りたくなる人も、やめておいたほうがよさそうです。

新NISAのメリット

もちろん新NISAには、メリットがたくさんあります。

非課税保有期間が無期限

NISA自体が恒久化され、非課税保有期間が無期限になったことで、期限を気にせず、より長期的な視点での投資が可能になりました。

つみたて投資枠と成長投資枠の併用ができる

旧NISAではできなかった二つの投資枠(積立投資に限定した枠と、積立および一括投資ができる枠)を併用できるようになり、資金や目的に応じて自由に組み合わせられるので、柔軟に運用できます。

つみたて投資枠では積立投資に適したファンドが選定されているため初心者でも選びやすい

投資初心者にとって投資商品選びは大変ですが、つみたて投資枠の対象は金融庁が定めた基準をクリアした長期の積立・分散投資に適したファンドのみです。本数も限られているため、初心者でも選びやすいのではないでしょうか。

売却後に非課税投資枠が再利用(※)できる

従来は一度使った非課税投資枠は売却しても消滅していましたが、新NISAでは売却分の枠の再利用が可能になりました。枠の再利用は売却した翌年から可能です。投資商品の見直しがしやすくなり、より機動的な資産運用が可能になりました。

※売却時の金額ではなく、買付金額分の枠が再利用可能となります。

新NISAで賢く運用するためのポイント

以上を踏まえて、新NISAを利用して賢く資産を運用するためのポイントを紹介します。

目標を設定して運用する

ただ漠然と「資産を増やしたい」と思っても、なかなか増えていきません。新NISAを始める前に「〇年後の住宅購入に向けて頭金を〇万円貯める」「子どもの入学までに〇万円用意する」など、いつまでにいくら貯めたいか、目標を設定しましょう。そこから逆算すれば、どのくらい投資する必要があるかがわかり、計画が立てやすくなります。

長期的な運用、分散投資を心がける

投資にリスクはつきものですが、長期・積立・分散投資によってある程度軽減することができます。短期で結果を求めるのではなく、あくまでも長期でじっくり構えて資産を増やしていくことを目指しましょう。

無理なく投資を続ける

新NISAで限度額が増えたといっても、すべて使い切る必要はありません。また、一気に大金を投資するとタイミング次第では損失が思いのほか大きくなることもあります。積立なども利用して、自分のペースで無理なく投資を続けていくことが大切です。

まとめ

このように、新NISAにはメリットもあればデメリットもあります。きちんとそれを理解したうえで、自分に合った利用方法を考えてみてはいかがでしょうか?

(執筆)三枝裕介

マネーライター。個人投資家向けマネー雑誌『MONEY JAPAN』(現KADOKAWA)で副編集長、書籍編集長などを経て、独立。2011年には、財務省の広報誌『ファイナンス』で1年間特集記事を担当した。2018年、休刊していた『ネットマネー』(産経新聞出版)を株式会社ZUUにて復刊、編集長を務める。2020年にマネーライターに転身し、現在に至る。『夕刊フジ』では、中小型の材料株に注目するコラム「来週の剛腕株」などを執筆。

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