NISA(少額投資非課税制度)などを活用して、日本株式に投資する個人投資家が増えています。ここでは、「投資信託」を中心に、日本株式の魅力、投資信託の特徴やメリット・デメリットなどをご紹介します。
一般的に、「日本株式」とは、日本国内の証券取引所に上場している会社の株式を指します。日本には、東京証券取引所、名古屋証券取引所、札幌証券取引所、福岡証券取引所の4つの取引所があり、これら証券取引所に上場している会社の株式は、証券取引所の取引時間帯であれば、個人投資家を含めさまざまな投資家が自由に売買することができます。
なかでも東京証券取引所、いわゆる東証は日本最大の証券取引所であり、日本の上場企業の大多数が取引されています。「プライム市場」、「スタンダード市場」、「グロース市場」の3つの市場があり、それぞれに特徴があります。
・プライム市場――日本を代表するグローバル企業をはじめ、比較的規模の大きな会社が上場しています。グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場で、株主数や時価総額、流通株式数など、高い上場基準が定められています。
・スタンダード市場――持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする、十分な流動性とガバナンス水準を備えた企業向けの市場。中堅企業や成長企業が上場しています。
・グロース市場――高い成長可能性を有する企業向けの市場。主に新興企業やベンチャー企業が上場しています。プライム市場やスタンダード市場に比べて、上場基準は緩和されています。上記2市場に比べてネット関連などの企業が多く、成長期待の大きい企業が多い一方、まだ十分に収益をあげていない企業も多いため、激しい値動きをする場合があります。
よくニュースなどで見かける「日経平均株価」は、日本の株式市場の値動きを示す代表的な株価指数です。株価指数には「日経平均株価」以外にもさまざまな指数が存在しますが、ここでは代表的な「日経平均株価」「TOPIX(東証株価指数)」「JPX日経インデックス400」をご紹介しましょう。
・日経平均株価――プライム市場に上場している日本を代表するような企業225社の平均株価指数です。「日経225」とも呼ばれます。構成銘柄数が225銘柄と少ないため、1銘柄の値動きが指数全体の値動きに影響を及ぼしやすい傾向があります。
・TOPIX(東証株価指数)――東京証券取引所に上場する銘柄を対象に算出される株価指数です。プライム市場に上場している銘柄を中心にスタンダード市場やグロース市場の銘柄も一部含まれます。約1,700銘柄で構成されているため、日経平均株価と比べ、日本株市場全体の値動きをより反映しやすいとされています。
・JPX日経インデックス400――東京証券取引所に上場する銘柄の中から、グローバルな投資基準に求められる諸条件を満たした、企業400社を対象とする株価指数です。
ここ数年、NISA(少額投資非課税制度)などを活用して投資する人が増えています。昨今では、モノやサービスの価格が上昇していることに加え、安全資産とされる預貯金では低金利のため資産を増やしづらいことなども背景にあります。一口に投資と言っても、さまざまな金融商品が存在しますが、ここでは日本株投資の魅力についてご紹介しましょう。
海外株式と比較して身近で分かりやすい――日本株式には、身近な企業もたくさんありますし、海外の株式に比べて企業のニュースや株価の情報を得やすい傾向にあります。そのため、日々のニュースなどから値動きをつかみやすく、比較的投資判断がしやすいという点がメリットといえるでしょう。
値上がり益が期待できる――現在の日本株式市場は、米国株式市場に比べて株価指標などでも割安感が顕著です。日本企業は収益性の改善余地が大きいとされ、今後水準訂正が起これば、日本株式市場の上昇につながるかもしれません。
配当総額が増加している――株式投資では、値上がり益に加えて、銘柄によっては配当も期待できます。配当とは、企業が株主に対して、保有する株式数に応じて利益を現金で分配するものです。一般的には、1年に1回もしくは2回行われることが多いです。配当の金額は銘柄によってまちまちですが、企業によっては年間で5%を超える配当を出しているケースもあります。特に近年、企業は株主還元策として配当金の増額を行うケースが増えてきています。これは、企業の業績改善やキャッシュフローの安定化を背景に、株主価値の向上を重視する動きが強まっているためです。
日本株式への投資には、個別株投資のほかにも投資信託を利用する方法があります。投資信託とは、投資家から集めたお金を運用のプロが運用し、その投資成果を投資家に還元する金融商品です。投資信託には、さまざまな資産を投資対象とするものがありますが、ここでは株式を投資対象とする投資信託についてご説明します。 個別銘柄への投資に比べて、複数の銘柄に投資することで投資リスクを抑える、分散投資の効果が期待されます。プロに運用を任せるため、投資初心者から上級者まで幅広い方に人気の金融商品です。
投資信託には、主にインデックス型とアクティブ型があります。インデックス型は、前述した日経平均株価やTOPIXなどの株価指数に連動するように設計された投資信託です。一方、アクティブ型は、日経平均株価やTOPIXなどの株価指数(ベンチマーク)いわば市場平均を上回るリターンを目指す投資信託です。
インデックス型の投資信託は、市場全体の値動きに連動するリターンが期待でき、運用の状況がわかりやすいのが特徴です。アクティブ型に比べて手数料も低い傾向があり、NISAのつみたて投資枠で購入できる商品もアクティブ型に比べてたくさんあります。その反面、市場平均を大きく上回るようなリターンは期待できません。
アクティブ型の投資信託は、市場平均を上回るリターンを狙って銘柄を選択し、投資します。投資対象となるテーマが豊富なのもアクティブ型の特徴です。銘柄の調査や分析などといったコストがかかるため、インデックス型に比べて手数料は高く設定されているものが多いです。運用の成果については、市場平均を上回るリターンが期待される一方、市場平均を必ず上回るとは限らず、そのテーマやファンドマネージャーの手腕が問われることになります。
では、日本株式市場は将来的にはどのような成長が期待されているのでしょうか?日本銀行による「展望レポート」(2025年5月1日公表)によれば、「わが国の景気は、一部に弱めの動きも見られるが、緩やかに回復している」とのこと。また、「企業収益は改善傾向にあり、業況感は良好な水準を維持している」とあります。
一方で、米国のトランプ大統領が打ち出す追加の関税政策などにより、目先は「海外経済が減速し、日本企業の収益なども下押しされる」ことが懸念されています。ただし、「成長ペースは一時的に鈍化するものの、その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる」とあります。
また、東京証券取引所では、2023年3月からプライム市場およびスタンダード市場の全企業に対し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請してきました。
その対応とは、
といった一連の流れを指し、投資者との目線のズレの解消や円滑なコミュニケーションの促進が期待されます。
2025年5月末時点では、プライム市場の92%(1,496社)、スタンダード市場の51%(809社)が開示(検討中含む)するなど、東証の取り組みが着実に進んでいます。
「株価は将来を映す鏡」とも言われ、日本経済が今後も成長していくことを前提とするなら、株価も上昇していくことが期待されます。足元には、さまざまな懸念材料もありますが、効率的な資産形成にむけて、積立投資など長期スタンスでの資産運用を、できるだけ早く始めることをご検討いただいてはどうでしょう。
投資信託を購入する際には、各投資信託の「目論見書」を必ず確認しましょう。目論見書での確認ポイントは以下の通りです。
目論見書では、どのような資産(運用先)に投資し、どのような投資成果を目指すのか、またどのような方針で運用するのかをチェックすることができます。
価格変動、金利変動、為替変動など、どのようなリスクが存在しているのかが記載されています。また、「リスクの管理体制」として、運用会社がどのようなリスク管理を行っているのかがわかります。
分配金に対する方針や分配の頻度、決算日などのタイミングを理解しましょう。
「基準価額」「総資産総額」「分配の推移」などから、投資信託の運用状況や資産規模などが確認できます。また、組み入れられている主な資産も把握できます。
投資信託には、コストがかかります。目論見書には、投資信託にかかる費用や税金などが記載されていますので、どれくらいのコストがかかるのかを把握しましょう。
モノやサービスの価格が上昇している今、安全資産とされる預貯金だけでは大切な資産は目減りしていく一方です。そこで、身近な企業もたくさんあり、海外の株式に比べて情報を得やすく、割安感のある日本株式に注目してみるのも選択肢の一つです。「銘柄選択が難しい」と考える人には、投資信託を活用する方法もあります。特にプロが運用する投資信託は投資初心者から上級者まで幅広い方に人気の金融商品です。複数の銘柄に投資するため、個別銘柄に対するリスクも分散されます。また、投資信託によっては、NISAも活用することができます。将来を見据えた資産形成のために、日本株式の投資信託にも目を向けてみてはいかがでしょうか?
(執筆)三枝裕介
マネーライター。個人投資家向けマネー雑誌『MONEY JAPAN』(現KADOKAWA)で副編集長、書籍編集長などを経て、独立。2011年には、財務省の広報誌『ファイナンス』で1年間特集記事を担当した。2018年、休刊していた『ネットマネー』(産経新聞出版)を株式会社ZUUにて復刊、編集長を務める。2020年にマネーライターに転身し、現在に至る。『夕刊フジ』では、中小型の材料株に注目するコラム「来週の剛腕株」などを執筆。